中小企業診断士が「意味ない」と絶望する瞬間5選


こんにちは、中小企業診断士の与田です。診断士登録は2008年なので、20年近く診断士の資格を持っていますが、今日は率直に診断士資格の有用性について感じていることをお話しします。
多くの時間という勉強時間を乗り越え、競争率の高い難関試験を突破した先に、輝かしい未来が待っている。中小企業診断士を目指す多くの人が、一度はそんな夢を抱きます。
しかし、その先で彼らを待ち受けているのは、必ずしもバラ色の現実ではありません。むしろ、多くの合格者が「あんなに勉強したのに、この資格は意味がないかもしれない…」と、深い絶望を感じる瞬間を経験します。
なぜ、彼らは絶望するのでしょうか。
この記事では、予備校や診断協会が決して語らない、中小企業診断士が「意味ない」と感じてしまう5つの残酷な瞬間を、現役診断士である私の実体験と、業界の不都合な真実を基に、生々しく描き出していきます。
もしあなたが診断士を目指しているなら、これはあなたの未来の姿かもしれません。目をそらさずに、現実を知る覚悟を持って読み進めてください。
絶望の瞬間1:「資格を取っても、給料が1円も上がらない」と知った時



多くの人が資格取得の動機として「キャリアアップ」や「収入増」を期待します。 しかし、中小企業診断士の資格を取得して、最初に直面するのがこの厳しい現実です。
診断協会のアンケートによれば、資格取得後に「処遇に変化がなかった」と答えた人が40.4%で最も多いのです。 大手企業や金融機関で資格手当が出るケースもありますが、それはごく一部。 ほとんどの企業では、この資格を持っているからといって給料が上がったり、昇進に直結したりすることは、まずありません。
「あんなに頑張って勉強したのに、会社からの評価は何も変わらない…」
この現実は、多くの企業内診断士の心を折ります。時間と費用を投資した結果が「ゼロ」であると知った時の無力感。これが、多くの診断士が最初に味わう絶望の瞬間です。
さらに深刻なのは、転職市場での価値の低さです。私自身、独立前に2回転職しましたが、診断士資格が有利に働いたことは一度もありませんでした。 転職市場では、資格名よりも「子会社の経営経験がある」「この分野の営業なら誰にも負けない」といった、具体的な実務経験が圧倒的に重視されるのが現実です。



とはいえ、信用金庫などでは診断士資格の取得は奨励され、昇進や年収にプラスに働くケースもあります。とはいえ、ほとんどの企業では、せいぜい資格手当がもらえるくらいのメリットしかないと思います。
「資格さえあれば、どこでも通用する」という甘い幻想は、合格と同時に木っ端微塵に砕け散るのです。
絶望の瞬間2:「仕事の獲り方が分からない」まま、協会活動という“無給奉仕”に時間を浪費した時
「よし、それなら独立して稼いでやる!」と意気込んでも、すぐに第二の壁にぶつかります。それは、「で、どうやって仕事を見つけるの?」という、あまりにも根源的な問題です。
予備校や合格体験記で語られる仕事の獲得方法は、決まってこうです。「診断協会に入って、協会活動を頑張る」。 しかし、これこそが多くの新人診断士を迷わせる、最大の罠なのです。
私自身、活動を本格化させようとした時にこの言葉を信じ、実態を調査しましたが、結論は残酷なものでした。協会活動だけで稼いでいる人は、いるにはいるが、現実的には厳しいです。
なぜなら、そもそも本当に稼いでいる診断士は、本業が忙しくて協会活動に熱心ではありません。 彼らが協会に顔を出す目的は、ボランティア活動のためではなく、自分の仕事を手伝ってくれる安価な「外注先(=下請け)」を探すためなのです。
そうとは知らず、多くの新人は「いつか仕事に繋がるはず…」と信じて、協会の研究会や部会活動といった「お勉強ごっこ」に、貴重な時間と労力を注ぎ込みます。 しかし、その活動はすべてが無料奉仕。 「勉強させてやっているのだからタダで当然」という異常な空気が蔓延しており、ただ無給で雑用をさせられるだけで、一向に仕事には繋がりません。



もちろん、運よく仕事を回してくれる診断士と知り合えば、仕事に繋がりますが、基本、診断協会は「仕事が欲しい人」の方が圧倒的に多いので、その競争や仕事を回してくれる人にたまたま出会えると言う運ゲームの様相もあります。
数ヶ月、一年と無給奉仕を続けた末に、「このままでは食えない…」と気づいた時の焦燥感と絶望。これが、多くの診断士が経験する、二つ目の苦い瞬間です。
絶望の瞬間3:「報酬7割中抜き」という、下請け奴隷の現実を知った時
運良く協会のコネで仕事にありつけたとします。しかし、そこで待っているのは、さらなる絶望です。診断士業界に深く根付いた「下請け構造」という名の搾取システムが、あなたを待ち構えています。
この業界では、元請けの会社や診断士が仕事を紹介する場合、下請けの報酬から約7割を中抜きするのが常識となっています。
例えば、着手金が20万円の補助金申請業務。元請けがまず14万円を抜き、実際に汗水垂らして作業するあなたに渡されるのは、わずか6万円。 これが、この業界の偽らざる現実です。
「やっと掴んだ仕事なのに、手元にはこれだけしか残らないのか…」
割に合わない報酬。不安定な立場。元請けからの無茶な要求。営業だけして中身を理解していない元請けが持ってくる、そもそも実現不可能な案件。 そんな「下請け地獄」の中で、自分がまるで都合の良い「奴隷」のように扱われていると感じた時、診断士としてのプライドはズタズタに引き裂かれます。
難関資格を取った結果が、この搾取されるだけの毎日なのか。その理不尽さに気づいた時、三度目の絶望が襲いかかります。



それでもお金を払ってくれる人はまだマシですね。徒弟制度が蔓延ってる業界なので、無料、もしくは無料に近い金額でコキ使う人も多いです。
絶望の瞬間4:資格維持のために「自腹で有給を使い、無給で働く」ことを強制された時
診断士の地獄は、稼ごうとする者だけに訪れるわけではありません。資格を「維持」するだけでも、想像を絶する苦しみが待っています。
診断士資格は5年ごとに更新が必要で、そのためには「5年間で30日分のコンサルティング実績(実務ポイント)」をクリアしなければなりません。
企業に勤めながらこの実績を積むのは極めて難しく、多くの企業内診断士は、協会が提供する「実務補習」に参加せざるを得ません。 そして、この補習こそが、診断士資格が「意味ない」どころか「有害」でさえあると言われる元凶です。
この補習、信じられないかもしれませんが、
- 自腹で5〜6万円の費用を支払い
- 自分の有給休暇を使い
- 中小企業へ無報酬でコンサルティングをしに行く
という、異常な制度なのです。「お金を払ってタダ働きをする」という、常識では考えられない行為が、資格維持のために平然と強要されています。



こちらがお金を払ってコンサルをするなんて、そんなので資格更新していいの?と言う感想ですが、そういういい加減なことを許してきたのがこの業界です。コンサルの引率の講師には謝金が支払われるので、そこもこの変な構造が改められない原因かと思います。
「自分の時間もお金も犠牲にして、なんでこんなことを…」
おまけに、この研修を担当する講師には当たり外れがあり、ひどい場合は、どうでもいい報告書の体裁にネチネチとダメ出しをされ、徹夜作業を強いられることもあります。 時間、金、精神のすべてを削り取られるこのシステムを体験した時、多くの診断士は「この資格、とって意味ない」とか「診断士なんか取るのやめとけ」と心から願うのです。
絶望の瞬間5:「自分の知識」が、AIに一瞬で陳腐化させられるのを目の当たりにした時
最後の絶望は、最も根源的で、抗いようのないものです。それは、自分が必死で身につけた「知識」という武器が、AIによって一瞬で無力化されてしまう現実を目の当たりにする瞬間です。



私自身の仕事の約7割は、すでにAIに置き換えられました。 以前は1週間かかっていた複雑な事業計画書の作成が、今ではAIを使えば半日強で終わってしまいます。
さらに衝撃的なのは、専門知識のない素人でも、AIを使えばプロが見ても「8割できている」と評価するレベルの事業計画書を作成できてしまうという事実です。
これまで診断士が価値の源泉としてきた、
- 企業の内部・外部環境分析
- マーケティング戦略の立案
- 財務諸表の分析
- 補助金の事業計画書作成
これらの業務は、もはやAIの方が人間より早く、正確に、そして網羅的にこなすことができます。 自分が何年もかけて蓄積してきた知識や経験が、AIの圧倒的な能力の前では、ほとんど「意味ない」ものになってしまう。
今は過渡期なので、多くの診断士は、AIの破壊力に気がついてません。ただ、今のAIをオモチャくらいにしか考えてない感度であれば、近い将来に自らの存在価値そのものが揺らぐような、深い絶望を感じることになでしょう。
幻想から覚め、現実を歩むために
ここまで、中小企業診断士が「意味ない」と絶望する5つの瞬間を解説してきました。
- 給料が上がらない現実
- 仕事が獲れない焦り
- 搾取される下請け構造
- 理不尽な資格維持制度
- AIによる知識の無力化
これらは、予備校のパンフレットには決して載っていない、この資格の「リアル」です。あんなに勉強したのに報われない。そう感じる瞬間は、残念ながら数多く存在します。
しかし、この記事は、あなたを絶望させるためだけに書いたのではありません。この厳しい現実を知ることこそが、本当に「食える」診断士になるためのスタートラインだからです。
では、この絶望的な状況を乗り越え、真のプロフェッショナルとして稼いでいくためには、具体的に何をすべきなのでしょうか。
その答えのすべてを、拙著『中小企業診断士はやめとけってホント? 予備校や診断協会が教えてくれない年収のリアル』に詰め込みました。本書では、AIを味方につけ、業界の搾取構造から脱し、自力で仕事を生み出していくための、より実践的な戦略を余すところなく解説しています。
幻想から目を覚まし、現実の世界で戦う覚悟ができた方だけ、ぜひ手に取ってみてください。その一歩が、あなたの未来を変えるはずです。