【年収1000万円は嘘か?】私が「中小企業診断士の年収」という不都合な真実をすべてお話しする理由

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「中小企業診断士は稼げる」…その幻想、私が壊します

こんにちは。中小企業診断士の与田太一です。

もしあなたが今、この資格に興味を持ち、輝かしい未来を描いているのなら、あるいは、すでに資格を取得し、これからプロとしての一歩を踏み出そうとしているのなら、この「年収」というテーマは、避けては通れない、最も切実な問いの一つだと思います。

会社の将来への漠然とした不安、専門性を武器に自分の力で生きていきたいという願い、あるいは、培ってきた経験を社会に貢献したいという想い。資格を目指す動機は人それぞれでしょう。しかし、その根底には「プロとして経済的に自立したい」という、健全で当然の欲求があるはずです。

私自身、予備校や出版社の語る「キラキラした成功ストーリー」に触れるたび、強い違和感を覚えてきました。

「診断士は1000万円稼げる!」という魅力的なキャッチコピー。
合格体験記に描かれる、充実したコンサルタントライフ。
しかし、私が現場で見てきた多くの診断士の現実は、それとはあまりにもかけ離れたものでした。。。

だからこそ、私はこの本を書くことを決意しました。

これまで業界の誰もが語らなかった、いや、ポジショントークや忖度によって語れなかった「年収」に関する不都合な真実を、すべてお話しするために。

この文章は、単なる本の紹介ではありません。私がなぜ、ここまで「年収」という生々しいテーマにこだわるのか、その理由と、あなたがこれから向き合うべき残酷な現実、そしてその先に待つ一筋の光について、私の言葉で直接お伝えするものです。

「予備校なんかを見ていると、『診断士は1000万円稼げる!』みたいに謳っていることが多いと思うんだ。もちろん、稼いでいる人もいるんだけど、それはごく一部なんだよね」

本書を読み進めることは、時にあなたの期待を裏切り、厳しい現実に直面させるかもしれません。しかし、もしあなたが表面的な情報に惑わされず、真に価値あるキャリアを築きたいと願うなら、この「残酷な真実」こそが、あなたの未来を照らす唯一の道標となるはずです。


第一の虚像:統計データが隠す「年収1000万円」の巧妙なカラクリ

なぜ「年収1000万超が3割」という数字を信じてはいけないのか?

中小企業診断士の収入を語る際、必ずと言っていいほど錦の御旗のように掲げられるのが、中小企業診断協会が公表する「活動状況アンケート調査」のデータです。このデータによれば、「年収1000万円以上の独立診断士が約30%存在する」とされています。

この数字だけを見れば、「3人に1人は1000万円プレイヤーなのか」と、希望に胸を膨らませるのも無理はありません。しかし、私が本書で繰り返しお伝えしているのは、「その数字を信じたら地獄を見る!」という警告です。 なぜなら、このデータは、巧みな方法で「見栄えの良い」数字だけが浮かび上がるように作られた、極めて偏ったものだからです。

私が本書で詳細に分析した、そのカラクリの核心をお話ししましょう。

「このアンケートの一番の“罠”だと僕は思っている。独立している人が47.8%なんていう数字、ぶっちゃけ、ありえないよ」

カラクリ①:「診断士全体」の声ではない、偏った回答者たち

まず、このアンケート自体の回答率はわずか17.4%、回答者数も約1,892名に過ぎません。これは、数多く存在する診断士のごく一部の声でしかない、という大前提を忘れてはなりません。

さらに、回答者のプロフィールを見ると、診断士業界の特異な構造が見えてきます。

「診断士で最も多いのは50歳代で33.1%。次が60歳代で26.1%。つまり、50歳以上で全体の約6割、60歳以上に至っては約4割もいるんです。ハッキリ言って、ものすごく年齢層が高い資格なんですよ」

これは、定年退職後にセカンドキャリアとして診断士を目指す方が非常に多いためです。私が「年金診断士」と呼んでいる、すでにある程度の生活基盤があり、お小遣い稼ぎ程度に活動している層が、統計上の「独立診断士」のかなりの割合を占めているのが実態です。 この時点で、現役世代がバリバリ稼いでいるというイメージとは、大きなズレが生じます。

カラクリ②:「稼げない人」が意図的に除外された年収調査の実態

そして、最も巧妙な罠が、年収に関する質問の「対象者」です。

この質問に回答しているのは、アンケートに答えた1,892名の中でもさらに絞られた、たったの579名に過ぎません。 8 そして、その対象者は「1年間にコンサルティングの業務に従事した日数の合計が100日以上」と答えた、ごく一部の診断士だけなのです。

これは何を意味するのか。私が本書で指摘しているのは、以下の事実です。

「理由は単純だ。この年収調査は…(中略)…コンサル業務をあまりやっていない『稼げていない人』がごっそり抜け落ちたデータなんだよ。ある程度稼げている人たちのデータだから、数字が良く見えるのは当たり前。中小企業診断士『全体』の年収は、間違いなくこの数字よりずっと下がる。この年収構成比は、正直言って、診断士のリアルな実態とはかけ離れている、と断言していい」

つまり、この「年収1000万超が3割」というデータは、いわばプロ野球選手の年俸調査のようなもの。すでに一軍で活躍している選手だけを集計したデータを見て、「野球を始めれば誰もが高給取りになれる」と考えるのが滑稽であるのと同じなのです。

資格は取ったものの、副業禁止の会社に勤めていて活動できない大多数の「企業内診断士」や、独立はしたものの、仕事の獲り方がわからずにいる「開店休業状態」の診断士たちの声は、この華やかな統計には一切反映されていません。


第二の虚像:補助金バブルが生み、そして破壊した「年収1000万円」モデル

なぜ、かつては「下請けでも年収1000万円」が可能だったのか?

「いや、それでも実際に年収1000万円を超えた診断士はいるじゃないか」という声が聞こえてきそうです。

その通りです。私も、ほんの数年前まで、診断士が比較的容易に高収入を得られた「特別な時代」があったことを否定しません。しかし、それこそが第二の、そしてより根深い虚像である「補助金バブル」の正体なのです。

2021年頃、コロナ禍で疲弊した日本経済を立て直すため、国は「事業再構築補助金」をはじめとする、前代未聞の経済支援策を打ち出しました。

狂乱の時代の実態

総予算1兆円を超える巨大な補助金は、当初50%近い採択率を誇り、「応募すれば2回に1回は通る」と言われるほどでした。 補助金ビジネスは、採択額の10%~15%が成功報酬となるため、例えば2000万円の補助金が通れば、一件で200~300万円の収入になります。

「それを年間4本やれば1200万円だよね。たとえ下請けだったとしても、数をこなせば簡単に1000万円を超えられる、という時代があったんだ」

この時期、特別なスキルや営業力がなくても、ただ黙々と申請書を作成するだけで、年収1000万円を超える診断士が続出しました。これが「診断士は稼げる」という神話の、最大の根拠となっていたのです。

バブルの壮絶な終焉と、「補助金ゾンビ」という悲劇

しかし、その甘い夢の時代は長くは続きませんでした。私が本書で詳しく解説している通り、バブルは壮絶な形で崩壊します。

「何が起こったかというと、色々あるんだけど、一番大きいのはやっぱり予算自体が縮小して、こんなに大きい予算が出なくなってしまったことだね。だから、正直言って、経営が苦しい中小企業診断士や倒産がかなり出ているんだ」

予算縮小に加え、コンサルタントによる申請書の作成代行などの「不正の大量発覚」が、審査の厳格化に拍車をかけました。 かつて診断士の収入を支えた巨大な柱は、もはや砂上の楼閣と化したのです。

さらに悲劇的なのは、安易に補助金に手を出した結果、逆に経営難に陥る「補助金ゾンビ」とも言うべき企業が大量に生まれてしまったことです。

「見通しの甘い事業を始めて、毎月何百万円も赤字を垂れ流し続ける。でも、事業をたためば数千万円の補助金を返還しなきゃいけないから、やめられない。そして、最後は倒産する。僕の周りでも、そんな地獄を見ている会社が本当にたくさんある」

この補助金バブルの熱狂と崩壊の物語は、特定のビジネスモデルに依存することの危険性と、表面的な「稼げる話」に潜むリスクを、私たちに教えてくれます。


これが現実だ:大多数の診断士が直面する「稼げない」収入の壁

統計の罠、そして補助金バブルの崩壊。

では、すべての幻想を取り払った先に待っている、中小企業診断士の「平均的」な収入の実態とは、どのようなものなのでしょうか。

私が本書で提示しているのは、多くの人にとって、決して楽観視できない現実です。

「ハッキリ言って、大半の診断士には『仕事がない』というのが実情だと思う」

その理由は、診断士業界が抱える構造的な問題にあります。

「仕事がない」という現実:公的業務の薄給とコネ社会

多くの新米診断士が頼りにするのが、市役所の相談窓口や専門家派遣といった「公的業務」です。しかし、その実態は「半日で2万円」といった薄給でありながら、募集がかかると仕事に飢えた診断士が殺到する熾烈な椅子取りゲームです。 さらに、その採用は実力ではなく「協会の偉い人とのコネクションで決まってしまう」という、極めて不透明な現実があります。

「やりがい搾取」の温床:報酬7割中抜きの絶望的な下請け構造

より深刻なのが、業界に蔓延する「下請け構造」です。自分で仕事を取れない診断士の多くは、元請けのコンサル会社や先輩診断士から仕事をもらうことになりますが、その報酬は悲惨です。

「この業界の相場として、下請けの診断士は、報酬の約7割を元請けに中抜きされる」

200万円の成功報酬の仕事でも、実際に汗を流した下請けの診断士の取り分は、わずか60万円。これが、多くの診断士が「稼げない」と感じる最大の理由の一つです。


なぜ私が、それでも「年収」という生々しいテーマにこだわるのか

ここまで、私は診断士の年収に関する厳しい現実をお話ししてきました。
「夢を壊すな」「お金の話ばかりで品がない」と思われるかもしれません。
しかし、私がここまで「年収」というテーマにこだわるのには、明確な理由があります。

それは、「きれいごとだけでは、プロとして顧客も自分も救えない」という、私の揺るぎない信念があるからです。

プロのコンサルタントにとって、「稼ぐ」とは、単にお金を得ることではありません。それは、**顧客が抱える課題を解決し、具体的な価値を提供したことの「証明」**に他なりません。正当な報酬をいただくことは、自らの提供価値に責任を持つというプロフェッショナルとしての覚悟の表れなのです。

年収の数字は、その価値を測るための一つのバロメーターです。その数字から目を背け、「やりがい」という言葉だけで自分を誤魔化している限り、本当の意味で顧客に貢献することも、自身のキャリアを切り拓くこともできません。

だからこそ、私はあなたに問いかけたいのです。
表面的な年収の数字に一喜一憂するステージから抜け出し、これからの時代を生き抜くための、本質的な「稼ぐ力」そのものを身につけたいとは思いませんか?

本書は、そのための具体的な戦略と戦術を、惜しみなく解説しています。

補助金に頼らず、いかにして「民間企業のコンサルティング」というブルーオーシャンを開拓するのか。ライバルである他の士業の弱点を突き、圧倒的な価値を提供する方法とは何か。

そして、自らの仕事を奪う脅威であるAIを、逆に圧倒的な生産性を生み出す「最強の武器」として使いこなすにはどうすればいいのか。

最後に、あなた自身の「稼ぐ力」について

本書を手に取ることは、単に資格の情報を得る以上の意味を持ちます。

それは、幻想を捨て、現実から、あなた自身の力で未来を切り拓くための「第一歩」を踏み出すという決意表明なのです。

その覚悟ができたなら、ぜひ、本書のページを開いてみてください。私が知りうるすべてのリアルと戦略を、そこに記しておきました。

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この記事を書いた人

与田太一のアバター 与田太一 中小企業診断士

2008年に中小企業診断士登録。マーケティング実務経験20年で、上場企業から中小企業までマーケティングサポートを行う。認定経営革新等支援機関。中小企業診断士協会三多摩支部に所属。

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