【結論】中小企業診断士は「やめとけ」は本当か?本書を読んだ上で、あなたが後悔しない選択をするための全知識

最後の問い:結局、中小企業診断士になるべきか、ならざるべきか

こんにちは。中小企業診断士の与田太一です。
これまでの一連の記事、そして本書『中小企業診断士やめとけ』を通じて、私はこの業界が抱える、多くの人が語りたがらない「不都合な真実」を、一切の忖度なくお話ししてきました。
年収データの嘘。下請け地獄とやりがい搾取の現実。補助金バブルの崩壊。そして、AIによる「知識」の無価値化。
これほどまでに厳しい現実を突きつけられたあなたは今、きっとこの最後の問いに行き着いていることでしょう。
「結局のところ、中小企業診断士は『やめとけ』というのは本当なのか?」
「これだけの困難があるのなら、この資格を目指す価値は、もはやないのだろうか?」
この記事は、その最後の問いに対する、私なりの「結論」です。
しかし、誤解しないでください。私の目的は、あなたの挑戦そのものを否定することではありません。私が本書を通じて本当に伝えたかったのは、安易な幻想を抱いたままこの世界に飛び込み、後悔する人を一人でも減らしたい、ただその一心です。
ですから、私の答えは、単純なYESかNOではありません。
この記事では、本書で暴いた「厳しい現実」を再確認した上で、では「どんな人であれば、この厳しい時代でも成功できるのか」という、成功者の条件を明確に提示します。そして最後に、あなたが後悔しない選択をするための「最終チェックリスト」をご用意しました。
ぜひ、最後までお付き合いください。
なぜ、安易に「目指すべきだ」と言えないのか?本書が暴いた「3つの厳しい現実」
私が「やめとけ」という強い言葉をタイトルに掲げたのは、中小企業診断士という資格を取り巻く環境が、根本的な構造問題を抱えているからです。本書全体を通じて明らかにした、その厳しい現実を3つに集約します。
現実①:「資格の価値」そのものが、時代遅れになりつつある
かつて、難関資格はそれ自体が価値を持ち、キャリアを保証してくれる「ゴール」でした。しかし、その時代は終わりました。
「はっきり言って、有利になることはほぼない。基本的にはゼロだと考えてくれていい」
本書で述べた通り、診断士資格は転職に有利になることはほとんどありません。 その理由は、弁護士や税理士のような「独占業務」がなく、「資格」よりも「実務経験」が圧倒的に重視されるからです。
さらに、AIの登場がその流れを決定的にしました。
「知識っていうのは、AIの方でもある程度代替できちゃうんだよね」
かつて専門家の武器であった「知識」は、もはやAIが瞬時に提供してくれるコモディティと化しました。 「資格を持っている=知識がある」という価値の源泉そのものが、根底から揺らいでいるのです。
現実②:「稼ぐための環境」が、極めて劣悪である
仮に資格に価値があったとしても、その価値を正当な報酬に変えるための「環境」が、この業界には整っていません。
「この業界の相場として、下請けの診断士は、報酬の約7割を元請けに中抜きされる」
多くの診断士は、自力で仕事が獲れず、元請けから仕事をもらう「下請け地獄」に陥ります。 そこで待っているのは、自分の価値を3割にまで買い叩かれるという、絶望的な搾取構造です。
さらに、診断協会自体が「ただ働き」を容認する文化の温床となっています。
「『勉強させてやる』という名目で、ただ働きをさせるケースが後を絶たない」
こうした環境では、どれだけ真面目に働いても、経済的に報われることは極めて困難です。
現実③:「稼ぎ方の常識」が、すでに崩壊している
そして、追い打ちをかけるように、これまで多くの診断士の収入を支えてきた「稼ぎ方の常識」そのものが、もはや通用しなくなりました。
「診断士のほぼ9割くらいは補助金で稼いでいた感じなんだ。それが補助金がなくなったということは、診断士の人たちは今後おそらくそんなに稼げなくなる」
2021年からの「補助金バブル」は、下請けでも年収1000万円を狙える異常な時代でしたが、すでに完全に崩壊しています。 最も簡単で、最も多くの人が頼っていた高収入への道が、閉ざされてしまったのです。



2023年と2024年で比較すると、補助金を中心にしている会社や診断士の稼ぎは大体1/3くらいに減っているところが多いです。
売上が1/3に減って、そのまま今後やっていけるところは、あまり無いかと思います。
では、どんな人なら「目指すべき」と言えるのか?成功者の「3つの条件」
これだけの厳しい現実を前にして、では、一体どんな人なら、中小企業診断士として成功できるのでしょうか。本書を通じて私が見出した、これからの時代を生き抜く成功者の条件は、以下の3つです。
条件①:資格を「ゴール」ではなく「武器」として使える人
成功する人は、資格取得を「ゴール」とは考えません。彼らにとって、資格は、自らのビジネスを有利に進めるための数ある「武器」の一つに過ぎないのです。
本書で解説した通り、診断士資格には、転職には役立たなくても、独立して戦う上では極めて強力なメリットが3つあります。
「メリットその1:「認定支援機関」という看板が、楽に手に入る」
「メリットその2:なぜか銀行員受けが良い?金融機関からの大きな信頼」
「メリットその3:診断協会は「仕事をもらう場所」じゃない。「仲間を見つける場所」だ」
これらのメリットを、どう戦略的に活用し、自分のビジネスに組み込んでいくか。資格にぶら下がるのではなく、資格を主体的に使いこなす。このマインドセットの転換ができるかどうかが、最初の分かれ道です。
条件②:「士業」の発想を捨て、「商売人」になれる人
多くの診断士が稼げない理由は、自らを「先生」という特権階級だと勘違いし、「待ち」の姿勢でいるからです。彼らは、営業やマーケティングといった「商売」をどこかで見下しています。
しかし、これからの時代に成功するのは、その逆です。プライドを捨て、自らの価値を自分の言葉で売り込み、顧客を開拓していく「商売人」としてのマインドを持つ人です。
「コンサルティング会社で、泥臭く飛び込み営業をやっているところなんて、まずない。だからこそ、チャンスなんだ」
協会に頼らず、自ら「飛び込み営業」や「銀行連携」といった泥臭い行動を起こせるか。他の士業が誰もやらないからこそ、そこには巨大なブルーオーシャンが広がっています。
条件③:AIを「脅威」ではなく「最強の部下」として使いこなせる人
そして、最も重要なのが、AIとの向き合い方です。
AIに仕事を奪われることを恐れ、新しい技術から目を背ける人は、間違いなく淘汰されます。成功するのは、AIを自らの生産性を爆発的に向上させるための「最強の部下」として、躊躇なく使いこなせる人です。
「AI活用の最大のポイントは、質問する前に、まずAI自体に情報をインプットして、学習させることなんだ」
「一度に『全部やれ』と丸投げするんじゃなく…(中略)…一つ一つ、ステップを踏んで指示を出すだろう?AIも、それと同じなんだ」
知識の暗記に時間を費やすのではなく、AIを自在に操るためのスキル(プログラミングや統計の知識、そして的確な指示を出す能力)を貪欲に学び続ける。この姿勢こそが、未来のコンサルタントの必須条件となります。



診断士は年齢層が高いこともあって、とにかくAIの活用が進んでいません。
まぁこれはJTCなど大企業も似たようなもんですが、自分の仕事が奪われる、自分の今までの経験が代替されるという現実は簡単に受け入れられる人は少ないでしょう。自分の人生を否定されるようなもんですから。
あなたが後悔しない選択をするための「最終チェックリスト」
さて、最後の結論です。
あなたが中小企業診断士を目指すべきか、それとも「やめとけ」という声に従うべきか。その答えは、あなた自身の中にしかありません。
以下の3つの質問に、あなたの心は「YES」と答えるでしょうか。
これが、あなたが後悔しない選択をするための、私からの最終チェックリストです。
- あなたは、資格取得をゴールだと思っていませんか? それをどう活用するかの具体的な「戦略」を持っていますか?
- あなたは、「先生」と呼ばれるのを待つのではなく、自ら泥臭く営業し、価値を売り込む「商売」をする覚悟がありますか?
- あなたは、新しい技術(AI)を学び続け、それを自らの生産性を爆発させるための「部下」として使いこなす意欲がありますか?
もし、この3つの問いすべてに、一点の曇りもなく「YES」と答えられるなら。
あなたは、この厳しい時代を生き抜き、真のプロフェッショナルとして成功する資質を、十分に備えていると言えるでしょう。
最後のメッセージ:それでも、私はあなたの挑戦を応援している



本書のタイトルには「中小企業診断士 やめとけ」と入っています。
これは、Google検索のサジェストでもこの言葉が入っているように、診断士試験を受ける人は、「実際、この資格を取ってもどんな未来が待っているか?」が分からなくて、このワードで検索している人が多いからかな?と思います。
これの本は、安易な幻想を抱いたまま、準備も覚悟もなくこの世界に飛び込もうとしている人に対する、私からの精一杯の警告です。
しかし、本書を読み、すべての厳しい現実を知った上で、それでもなお「挑戦したい」とあなたの心が燃えているのなら。その時、本書のタイトルは、あなたにとって全く違う意味を持つはずです。
それは、「その他大勢と同じ道を『やめとけ』」「古い常識に囚われるのを『やめとけ』」「ただ待つだけの自分を『やめとけ』」という、新しいキャリアを始めるための力強いエールとなるでしょう。
本書は、そんな覚悟を決めたあなたのための「リアルな地図」です。
ぜひこの地図を手に取り、幻想ではない、あなた自身の力で掴み取る、本当の成功への一歩を踏み出してください。その挑戦を、私は心から応援しています。