中小企業診断士の年収実態|4割が500万円以下、でも26%が1000万円超の真相

中小企業診断士になれば年収1000万円も夢じゃない
そんな甘い言葉に惑わされていませんか?
私は現役の中小企業診断士として、この業界の「表」と「裏」を見てきました。予備校や診断協会が決して語らない、診断士の年収に関する衝撃的な真実をお伝えします。
実は、中小企業診断士の約4割が年収500万円以下という現実があります。その一方で、26%以上が年収1000万円を超えているというデータも存在します。この極端な格差は一体なぜ生まれるのでしょうか?
本記事では、診断協会の公式データを徹底分析し、予備校が決して教えてくれない中小企業診断士の年収の「リアル」を包み隠さずお伝えします。
診断協会の年収データに隠された「不都合な真実」とは
まず、多くの人や予備校などが参考にする中小企業診断協会の「活動状況アンケート調査」について、重要な事実をお伝えしなければなりません。
年収データの回答者はたった579名|全体の3割以下という衝撃
診断協会のアンケート全体の回答者は1,892名でした。しかし、年収に関する質問の回答者数はたったの579名。これは全体の約30%に過ぎません。
なぜこんなに少ないのでしょうか?実は、この年収調査には驚くべき条件が設定されていたのです。
アンケートは「コンサル業務100日以上の人」という条件
年収調査の対象は「1年間にコンサルティング業務に従事した日数が100日以上」の診断士に限定されていました。
つまり、企業内診断士で副業禁止の人、年間100日未満しか診断士業務をしていない人、開業したばかりで実績が少ない人、定年退職後に細々と活動している「年金診断士」など、多くの診断士がこの時点で除外されています。これは「ある程度稼げている人だけ」を集めたデータなのです。診断士全体の年収実態は、公表されている数字よりもはるかに厳しいというのが現実です。

体感的にも、この診断協会の年収の数字は実態とは少し違うイメージがあります。
年収分布の実態|なぜ4割が500万円以下なのか
それでは、実際の年収分布データを見てみましょう。
中小企業診断士の年収階級別分布(有効回答1,207名)
年収階級 | 人数 | 構成比 |
---|---|---|
100万円以下 | 113人 | 9.36% |
101~200万円 | 91人 | 7.54% |
201~300万円 | 98人 | 8.12% |
301~400万円 | 90人 | 7.46% |
401~500万円 | 100人 | 8.29% |
501~800万円 | 236人 | 19.55% |
801~1,000万円 | 161人 | 13.34% |
1,001~1,500万円 | 177人 | 14.66% |
1,501~2,000万円 | 73人 | 6.05% |
2,001~2,500万円 | 25人 | 2.07% |
2,501~3,000万円 | 18人 | 1.49% |
3,001万円以上 | 25人 | 2.07% |
最も多い年収層は501万円~800万円(約20%)
データを見ると、最も多い年収層は501万円~800万円で全体の19.55%を占めています。これが中小企業診断士の「最頻値」、つまり最も典型的な年収帯です。しかし注目すべきは、年収500万円以下が全体の40.77%を占めているという事実です。
年収100万円以下が約10%|診断士の多様な実態
さらに衝撃的なのは、年収100万円以下の診断士が9.36%も存在することです。これは一体どういうことでしょうか?
実は、中小企業診断士には多様な活動形態があるのです。企業内診断士は本業の給与とは別に、診断士活動からの収入はほぼゼロという人が大半です。副業診断士は週末だけ活動し、年間数万円、多くても数十万円程度の収入にとどまります。定年退職後の「年金診断士」はお小遣い稼ぎ程度の活動をしている人が多く、開業初期の診断士はまだ顧客基盤がなく、収入が安定していないという実態があります。
独立診断士は全体の2~3割|「年金診断士」という見過ごせない実態
診断協会のデータでは「独立している」と回答した人が47.8%となっています。しかし、これも大きな誤解を生む数字です。
定年退職後の「お小遣い稼ぎ」診断士の存在
診断士の年齢構成を見ると、50歳代が33.1%、60歳代が26.1%で、50歳以上が合計で約60%を占めています。つまり、診断士の6割が50歳以上なのです。
この中には、定年退職後に開業届を出しただけの「年金診断士」が多く含まれています。彼らの多くは年金収入がメインで、診断士業務は補助的なものです。公的機関の相談員など、低単価の仕事が中心で、年間数十万円程度の収入で満足している人が大半です。
本当に稼いでいる診断士の割合
私の実感では、現役世代でフルタイムで診断士業務を行い、それで生計を立てている人は中小企業診断士全体の2~3割程度です。さらに、その中でも年収1000万円を超えているのは、ごく一握りのトップ層だけというのが現実です。


補助金バブル崩壊|年収1000万円神話の終焉
ここで、診断士業界を襲った大きな変化について触れなければなりません。
事業再構築補助金で誰でも稼げた黄金時代
2021年のコロナ禍において、診断士業界には未曾有の「補助金バブル」が発生しました。事業再構築補助金は予算規模1兆1,485億円という戦後最大規模で、成功報酬として採択額の10~15%が診断士の懐に入りました。例えば、2,000万円の補助金が採択されれば、それだけで200~300万円の報酬です。これを年間10~20件こなせば、簡単に年収1000万円を超えることができました。
IT導入補助金も同様に「美味しい」仕事でした。毎月募集があり、採択率も高く、労力が少ないのに量産が可能だったため、元請け会社によっては主婦のパートさんにやらせていたくらいです。
不正の横行と規制強化|バブルの終焉
しかし、この状況は長く続きませんでした。事業計画書の代行作成という不正が横行し、IT導入補助金では8%で不正が発覚しました。さらに、無人販売店舗やコインパーキングなど、明らかにずさんな計画でも通ってしまう審査の甘さが問題視され、行政レビューでの厳しい指摘を受けることになりました。
その結果、審査は厳格化され、規制も強化されました。現在、補助金で簡単に稼げる時代は完全に終わりました。多くの診断士が補助金に依存していた収益モデルは崩壊し、新たな稼ぎ方を模索する必要に迫られています。
これから診断士で稼ぐための「唯一の道」
補助金バブルが崩壊した今、診断士として生き残るにはどうすればよいのでしょうか?
定期コンサルティングこそが生き残りの鍵
独立診断士が狙うべきは、たった一つ。「定期コンサル」です。定期コンサルとは、月額20万円程度の顧問契約を結び、安定した継続収入を得るビジネスモデルです。顧客との長期的な関係を構築することで、収入の安定化を図ることができます。
興味深いことに、未経験でも定期コンサルを獲得している診断士が存在します。彼らに共通するのは、専門知識よりも営業力とマーケティング力を重視していることです。
必要なのは知識ではなく営業力とマーケティング力
成功している診断士に共通するのは、自ら顧客を開拓する営業力、自分の価値を伝えるマーケティング力、そして顧客獲得にコストをかける投資意識です。
クライアント1社獲得には労力を含めて約10万円のコストがかかります。月額20万円の顧問先を5件獲得するには、300~400万円の投資が必要という計算になります。この投資を惜しまず、戦略的に顧客開拓を行える診断士だけが、安定した収入を得ることができるのです。
ブルーオーシャンとしての民間企業市場
公的業務は単価が安く、競争も激しいのが現実です。例えば、専門家派遣の仕事では、コンサルティングをやってレポートを書いて、報酬は半日で2万円。移動時間を含めれば、実質的に丸一日働いて2万円という「やりがい搾取」とも言える状況です。
一方で、民間企業への直接営業は競合が少なく、診断士の多くが手を付けていない領域です。単価を自分で設定でき、成果に応じた報酬アップも可能です。民間企業の定期コンサルこそが、診断士として稼ぐための最も現実的な道なのです。
AIが診断士の仕事の7割を奪う|生き残るための3つのスキル
最後に、避けて通れない現実をお伝えします。
すでに事業計画書作成はAIで可能に
現在、私の仕事の7割はすでにAIに置き換わっています。補助金の事業計画書作成、マーケティング分析、財務分析、各種レポート作成など、これらの「知識労働」は、もはやAIの方が正確で速く、網羅的です。
実際に、高校卒の全くの素人にAIを使って事業計画を書かせるプロジェクトを実施したところ、プロのコンサルタントと遜色ない成果物が作成できました。これは、知識そのものの価値が急速に低下していることを意味します。
生き残るために必要な3つのスキル
AIに代替されない診断士になるために必要なスキルは3つあります。
第一に、ビジョンを語る力です。業界の現状分析や未来予測、独自のソリューション提案など、深いレベルでのビジョン構築はまだ人間の領域です。AIを優秀な部下として使いこなし、全体をプロデュースする力が求められます。
第二に、営業・マーケティングスキルです。AIがどれだけ優秀でも、顧客との信頼関係構築や価値の伝達は人間にしかできません。これまで士業が全くやってこなかった、この分野にこそ巨大なブルーオーシャンが広がっています。
第三に、AIを使いこなすスキルです。プログラミングの基礎知識、統計・確率の理解(統計検定2級レベル)、プロンプトエンジニアリング能力などが必要です。AIを敵ではなく、優秀な部下として使いこなせる診断士だけが生き残れる時代が来ています。
まとめ|それでも診断士を目指すあなたへ
中小企業診断士の年収実態をまとめると、全体の40.77%が年収500万円以下という厳しい現実がある一方で、26.34%が年収1000万円超を実現している事実もあります。独立してフルタイムで活動する診断士は全体の2~3割に過ぎず、補助金バブルは崩壊し、新たなビジネスモデルが必要となっています。さらに、AIの脅威は現実であり、適応が不可欠です。
「資格を取れば安泰」という時代は、とうの昔に終わりました。しかし、だからこそチャンスがあるとも言えます。古い体質の業界で、多くの診断士が変化に対応できていない今、営業力とマーケティング力を身につけ、AIを味方につけた診断士には、大きな可能性が広がっています。
中小企業診断士という資格は、活用方法次第で多様な価値を生み出すプラットフォームです。ただし、その価値を実現できるかどうかは、あなた自身の行動と戦略次第です。
この現実を直視した上で、それでも診断士を目指すのであれば、資格取得はスタートラインに過ぎないことを理解し、営業力・マーケティング力の習得に投資し、AIを味方につけるスキルを身につけ、民間企業の定期コンサルを狙い、収入源を多角化することを意識してください。
厳しい現実をお伝えしましたが、これが予備校や診断協会が決して語らない「本当の診断士の姿」です。この真実を知った上で、覚悟を持って挑戦する人にこそ、成功のチャンスがあると私は信じています。